個別指導時代の終焉(3)

個別指導が最強になるとき

前回、個別指導では進むペースが遅いので「自分で進めて、わからないところだけを先生に聞く」のが効率的な個別指導学習だと書きました。


これで進められれば集団授業にも負けません。


集団授業では「カリキュラム縛り」があるので、「生徒一人でやれるところ」でも省いて授業を進めることができません。


しかし、個別指導だとこれができます。


例えば「1週間で1章文やってきて(丸つけ、解説読むまで)」と指示を出します。


そうすると、1つの学年の内容が1か月~2か月くらいで終えることができます。


以前、このやり方でやった生徒は、県立最難関高校に前期入試で合格することができました。

 

この進め方は、個別指導授業を担当する講師の多くが大学生という点でも最適の方法です。

 

というのは、過去問分析・カリキュラムを作る必要がないからです。

 

とりあえず全てやらせてしまうので、その必要がなくなるというわけです。

 

それだったら質問対応できれば高い授業料払ってプロ講師にする必要もなく、コストが抑えられる大学生が適任でしょう。

 

授業もたくさん取る必要もありません。「自分でやる時間」をたくさん作ることが大事ですから。

 

先程の県立最難関校に合格した生徒は、週2回だけ受講し、それ以上授業を増やさずほとんど自習で勉強していました。スタッフは、進める教材とスピードの指示を出し、毎月模擬試験を受けさせ、その結果で弱点が出ればそこを補っていく。これだけでした。

 

おそらく個別指導で難関入試を突破しているのは、このパターンじゃないかと思います。

 

しかも、短期間働いている大学生で結果を最大限に出すならこれしかないのではと思います。

 

なぜかというと、大学生講師の給与の対象になる労働時間が「授業をしている時間だけ」だからです。

 

大学生には、一般的に「1つの授業担当したら○○円支払う」ということになっています。

 

そうすると、授業の事前準備はできるだけしない方が得というようになっていきます。

 

大学生講師は、どれだけ授業時間外で仕事をしないで回せるかという方向に頭を使います。

 

集団授業では、自分が主体でやらなければいけないので準備しないと授業ができませんけど、個別指導では準備しなくても授業を行うことができるんです。

 

「どこがわからない?」

 

「じゃあ、わからないところのテキストの○ページ開いて。どの問題が学校でわからなくなったの?あーそれはね、こういう風に解くんだよ。じゃあ、その下の問題解いてみて。」

 

という具合なので、教科書など何か教材があれば準備は不要なんです。即興で問題が解けないときだけ事前に準備する必要があるかもしれませんけど、それは例外です。辞書や参考書もあるので、一緒に見ながら解説できれば問題はありません。

 

そういうわけで、準備なく授業が進められる個別指導で、授業時間のみに給与が支払われるなら、準備しない方向に進んでいきます。どれだけ研修をやろうが、準備をできるだけしないでやった方が得になる仕組みなので、そういう風になっていくのは避けられないでしょう。

 

生徒の成績が上がらなければ給料が支払われないなんてことにはならないですからね。しかも、準備しなくても、前述の例のような上手いやり方ができれば結果が出ることもあります。

 

これは大学生が怠けているとかいう問題ではなく、構造的な問題なんです。

 


そうすると、これらのような授業準備不足でも結果が出やすい形にもっていくのが個別指導の落としどころになってきます。

 

つまり、自分でできるところは生徒にやっておいてもらって、わからないところだけを質問する「スピードアップ型の個別指導」が無難で成績も上がりやすい。


 

とはいえ、そのようなスピードアップ型の個別指導を実行できるのは「学力上位の生徒」だけなんですよね。

 

多くの生徒はそんなことできません。

 

したがって、個別指導を受けている多くの生徒には「わかりやすさ」を提供しつつ「時間切れで終わらせる」のが毎年の定番パターンになってしまったのです。

 

 

「一人でできないなら授業を増やせばいい」という単純な話でもありませんよ。

 

個別指導では授業を増やすと料金が倍増していくからです(いくらでもお金をかけられるなら別ですけど)。しかも結果が出るかもわかりませんから、結果が出ずに保護者から恨まれることだってあるかもしれません。

 

また、学校・部活があるので、1科目で週に何回も授業を受けることはしにくいですし、またそれは生徒自身が嫌がるでしょう。

 

続き→個別指導時代の終焉(4)