今井むつみ『ことばの発達の謎を解く』



今回は子どもがことばを覚える仕組みにせまった本を紹介します。


今井むつみ先生の『ことばの発達の謎を解く』です。


今井むつみ先生は、全国入試の言語論では鉄板の著者です。


2011年入試では『言葉と思考』がブレイク。


そして近年では、今日紹介する『ことばの発達の謎を解く』で言語論での不動の地位を確立しています。


ところで、この『ことばの発達の謎を解く』を読むと、子どもは母語の習得において、すごい学習能力を発揮しているということがわかりますよ。

 

なぜ、このことが外国語の学習ではできないのか!!赤ちゃんにできて、自分はできないのはなんで?・・・この点については、筆者は以下のように説明してくれます。

●大人が外国語を学習する時でも、外国語での意味のシステムをあらかじめ先に学ぶことはできません。子どもが母語を学ぶときと同じように、単語を一つ一つ学びつつ、同時にシステムを部分的に少しずつ学び、単語の数を増やす。つまりシステムの構造を徐々に理解しながらシステムを創り上げつつ、単語の意味とシステムの理解の両方を少しずつ修正していくというプロセスが必要なのです。


 しかし、外国語の単語の意味を調べるために辞書を引いた時に辞書が挙げている母語と「対応する」外国語の単語は、母語の単語と同じ境界を持つという思い込みがあり、そのため、いったん母語に対応する語を覚えてしまうと、外国語では区別されるべきことばをなかなか覚えることができません。


 wereは「着る」と思い込んでしまいwearとput onの違いになかなか気づけず、境界の修正もなかなかできないのです。


 ことばの意味は単語単体で存在するのではなく、関係する意味を持った単語群の相対的な関係で決まるということーつまりあるシステムの中に一つ一つの単語があるということ。そのシステムは言語ごとに違うので、当然、一つ一つの単語の意味も、一部重なることはあっても、面として全部重なることはほとんどないこと。これらを理解して、意識的に外国語と母語の単語に共通する部分と異なる部分に意識を向けること。これだけでも「ことばを知っていても使えない」学習の仕方から「知っていることばを使いこなせる」学習の仕方へと、外国語の学習の仕方はずいぶん変わるはずです。●