先日の記事で面白いものがありました。脳科学者の池谷裕二先生の記事です。
ダニング=クルーガー効果というもので、次の3つのことが実験で明らかにされたようです。以下引用。
【ここから引用】
1.能力の低い人は自分のレベルを正しく評価できない。
2.能力の低い人は他人のスキルも正しく評価できない。
3.だから、能力の低い人は自分を過大評価する。
もちろんこの結果だけでは「能力が低いから自分を客観視できない」のか「自分を客観視できないから能力が低い」のかはわかりません。しかし、この研究は心理学では広く認知され、博士らの名前にちなんで「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれるようになりました。
この効果の面白いところは、ダニング=クルーガー効果について初めて知った人の多くが「たしかに自分を勘違いしている人はいますね。身近な人の顔が具体的に思い浮かびますよ」と笑顔で答えてくれることです。つまり多くの人は「まさに自分が該当する」かもしれない可能性に思い至らず、自分を棚に上げて、他人に例を探し始めるのです。
…
いずれにしても、ここで見逃せないポイントは、脳が無意識のうちに判断をミスしてしまうという点です。決して「わざと」でなく、あくまでも自動的で反射的な思考として「そう思ってしまう」わけです。
つまり、脳には特定の「思考癖」があるというわけです。
そうした脳のクセは「認知バイアス」と呼ばれます。認知バイアスは曲者で、しばしば奇妙で、ときに理不尽でさえあります。こうした心理のクセに気づいていないと、ふとしたところで判断を誤ったり、損したりしかねません。だとしたら、これをよく理解しておくことは、日常をよりよく生きることにつながります。
【引用終わり】
引用元池谷裕二「能力の低い人ほど、自分を「過大評価」する」より
塾の仕事では、このことを感じる場面が多々あります。
勉強がうまくできず成績低迷している生徒をよくみかけますので、「あの子はあれがダメだな」と悪いところが次々と見えてくるのです。
例えば「計画が立てられない」「コツコツ勉強できない」「目標がない」「集中力がない」などなど。塾長ブログ、講師のブログなどではこういう内容をネタにしているものをよく見かけます。
私自身も、ブログ、テレビ、本などで、そういう事例で失敗しているケースをみると「うちの塾のあの生徒みたいだな」と思うことはよくあります。
しかし、こういう思考は、池谷先生が指摘しているように、「自分にもあてはまるところがあるかも」というところが抜け落ちてしまっていることはよくあります。
恐ろしいのは、過大評価してしまう自分は能力が低く、そんな自分は他人のスキルを正しく評価できていないという可能性すらあることです。
特に、こういう脳のクセを、先生や上司など指導者側が自覚していない場合には心配が残りますね。
だって「他人のスキルを正しく評価できない」人が、他人を指導したり先導するのは難しいでしょう?
子どもを持つ親御さんも、「なんてだらしのない子なのだろう」「どうしてテスト前なのに勉強しないの?」と思うことがあるかもしれません。
しかし、そういうときは一度立ち止まって下さい。「私の場合はどうだろう」と。そうすると、ご自身にも似たようなところがあるのではないでしょうか。似ていると思うと、どうやったらこの子の行動が変わるのかが遡ってみえてくる。そんなことがあるかもしれないと思う今日この頃です。
引用元池谷裕二「能力の低い人ほど、自分を「過大評価」する」より
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