絡み合いが強い選択肢が正解になりやすい
選択肢同士が絡み合うと正解になりやすいというのは次のような選択肢を例に考えるとわかるのではないでしょうか。
(問)A~Cのカッコに入る語の組合せで正しいものはどれか
1 Aしかし Bつまり Cあるいは
2 Aしかし Bつまり Cところが
3 Aしかし Bまた Cあるいは
4 Aつまり Bつまり Cあるいは
もしここで少数派「Aつまり」「Bまた」「Cところが」が正解だと答えがすぐにわかってしまいますよね。だから、なるべく選択肢の共通点を増やし、出題者は選択肢同士を絡ませてくるというのです。この例題だとA~C全てで他の選択肢と絡んでいる1が正解になりやすいということです。
実際の出題でみてみましょう。
【日大習志野高校・平成29年】あ~おの出来事を早いほうから時間順に並べ替えたとき、正しいものを①~⑥の中から1つ選びなさい。(英語)
①い→お→あ→う→え
②い→お→う→あ→え
③え→い→あ→う→お
④お→い→あ→う→え
⑤お→い→う→あ→え
⑥お→い→え→あ→う
英文の並べ替え問題です。まずスタートですが「お→い」で始まるのが3つ。また「あ→う」のつながりがあるものが4つ。最後が「え」になっているのが4つ選択肢同士で絡み合っています。
その結果一番絡み合っている④が正解でした。6択の問題でしたが、このやり方だと、英語をほとんど読まなくても絞り込めますし、悩んだときにも選択肢を比較することで正解へと近づけます。
【日大習志野高校・平成29年】本文から読み取れる教訓は何か、最も適当なものを選びなさい。(古文)
①立場が弱い者に見下した態度で接すると、天の裁きが下ることになる。
②人の親切に対して恩知らずなふるまいをすると、その報いを受ける。
③他人が困っている時に情けをかけておけば、自分にもよい報いが訪れる。
④親切心から出た行為であっても、相手が恩を感じてくれるとは限らない。
親切、恩、報いと一番絡みの強い選択肢である②が正解でした。このように共通する単語をみつけて絡み合い度を探ると答えが浮かび上がってくることがあります。
【芝浦工大柏高校・平成24年】傍線部「おもひよらぬ事なれば」は、「思いもよらないことなので」という意味ですが、このことの説明として最もふさわ しいものを次の中から選び、番号で答えなさい。(古文)
1 夜遅くに門の上にいるのは盗賊ぐらいのものだと思っていたのに、実際にいたのは美しい女性だったので、目を疑った。
2 門の上にはだれもいないはずだと思っていたのに、行ってみ るとしっとりした美しい女性がいたので、不思議に思った。
3 火がともっているように見えても実際には火などともってい ないはずだと思ったのに、実際に火をともしてあったので、驚 いた。
4 火をともしているのは鬼ではないかと想像していたのに、実際にはとてもしっとりした美しい女性だったので、意外だと感 じた。
5 門の上には鬼が来ていると思い、退治しようと意気込んでい たのに、実際には女性がいただけだったので拍子抜けした。
美しい女性、鬼、火の全てで絡み合った4が正解だった。
単語だけではなくて文の絡み合いでも選択肢を絞れることもあります。
【芝浦工大柏高校・平成24年】「私」が大五郎の死を通して抱いた心情として最もふさわし いものを次の中から選び、番号で答えなさい。
1 大五郎は、獣医さんが大嫌いで、死にそうになっていても獣 医さんに渡されることを嫌がったが、望みもしない治療を受けさせられた大五郎に同情している。
2 大五郎は、温かく清潔な病院で進んだ治療を受けて死んだが それは大五郎にとって本当に幸せな死に方ではなかったように思えて、自分のした行為を悔んでいる。
3 大五郎は、獣医さんが嫌いで病院に連れて行かれることを嫌った結果、病気の発見も手当ても遅れて死んでしまったので、 もっと手の施しようもあったのではないかと後悔している。
4 大五郎は、大嫌いな病院で恐ろしい思いをしながら進んだ治療を受けたにもかかわらず死んでしまったので、大切な犬の命 さえ救えなかった自分の無力さを痛感している。
5 大五郎は、無理に病院に入院させられ、恐ろしい思いをして治療を受けさせられるよりは、外で自然に死を迎えた方が幸せ だっただろうと、大五郎の運のなさを哀れんでいる。
正解の2だけ3や4と絡みがあるのが不思議。
【日大習志野高校・平成29年】 「たまらなくいやな気持がした」とあるが、それはなぜか、最も適当なものを選びなさい。
①自分の行動がかえって看病する人たちに迷惑をかける結果になってしまったことで、批判的な指摘に納得せざるを得なかったから。
②自分の取った行動は正しいと信じて疑わなかったが、結果的に人の不幸に乗じて自己満足に浸っていたに過ぎないと気付い たから。
③近しい人の幸福を願った行動だと思っていたが、実は他人の不幸にひそかな喜びを感じていた自分のいやらしさに気付いたから。
④自分の取った行動はきっと良い結果をもたらすはずと信じていたが、それは単なる余計なお世話に思われていることを悟ったから。
これも2つの選択肢と絡んでいる②が正解
【芝浦工大柏高校・平成25年】傍線部「もう『コッコちゃん』とは呼べない」のはなぜか。 その理由としてふさわしいものを次から一つ選び、記号で答えな さい。
①もうあのニワトリはただのモノのように食べられてしまって この世に存在せず、元気だった頃のように「コッコちゃん」と 愛称で呼びかけることもできないのだと絶望しているから。
②「コッコちゃん」と「ちゃん」づけで呼んでしまうと、無邪 気だった子どもの頃の楽しい思い出が蘇り、学校に行かずに孤 独を感じている現在の自分自身に我慢できなくなるから。
③「コッコちゃん」という名前で呼んでしまうと、ペットとして育ててきた長い年月のことを思い出し、最後まで自分の手元 で育てられなかったという後悔にさいなまれてしまうから。
④「コッコちゃん」という固有名詞で呼んでしまうと、この世 にたった一羽しかいない自分のペットだったことを思い出し、 それが目の前でモノのように分解されてしまったことに耐えきれなくなるから。
⑤おいしく食べることができればせめてもの供養になったはず なのに、結局吐き出してしまったので、もう飼い主のように 「コッコちゃん」と呼ぶ資格が自分にはないのだと諦めているから。
②だけ「ちゃん」づけのことを話題にしているので仲間はずれで×。
③と④は「ペット」について触れていて絡んでいる。また①と④は「モノのように」というところで絡んでいる。以上の絡み合いで共通しているのは④でこれが正解だった。
【芝浦工大柏高校・平成24年】傍線部「外に出してほしいとしきりにドアをひっかくので、 ドアを開けてやると、離れの軒下までよろめくように歩いてそこにうずくまってしまう。いくら連れもどしてもおなじことのくり かえしであった」とありますが、「私」は大五郎のこのような行動を、大五郎の死後どのように解釈しましたか。最もふさわしいも のを次の中から選び、番号で答えなさい。
1 動物は、自分の死期を悟ると身を隠そうとするもので、この ときの大五郎も自分の死期を悟り、雪の中でも外に出ようとすることで、獣医さんに渡されることを強く拒んでいた。
2 動物は、自分の死期を悟ると人間から離れて身を隠すが、こ のときの大五郎も、自分が死ぬことを悟り、仕事に出かけようとする「私」に迷惑をかけないように、外へ出て死を迎えようとしていた。
3 動物は、自分の死期を悟ると人間から離れて身を隠すものであるが、このときの大五郎は、獣医さんに連れて行かれないように抵抗するだけで精一杯だった。
4 動物は、自分の死期を悟ると人間から離れて身を隠そうとするが, このときの大五郎も、自分の死期を悟り,「私」から離れて死を迎えようとしていた。
5 動物は、自分の死期を悟ると身を隠そうとするが、このとき の大五郎は、死期を悟っていたわけではなく、獣医さんに渡さ れるのが嫌で、「私」から逃げようとしていた。
同じ表現でたくさん絡んでいるのは2と4。選択肢みただけで、ここまで絞れていれば本文をチェックすれば正解を導くのも難しくないはずです。なおこの問題の正解は4でした。
同じ単語じゃなくても言いかえ表現は絡み合いありと判定せよ!
【芝浦工大柏高校・平成25年】傍線部「僕も集団から、群れから離れて考える必要があった」のはなぜか。その理由としてふさわしいものを次から1つ選 び、記号で答えなさい。
ア 考え方が無意識の間に周囲と均質化して、もともと持ってい た独自の考えを失ってしまうことを恐れたから。
イ 周囲のみんなからはみ出すことを恐れて、周囲の勢いに流されざるをえなくなったことを残念に思ったから。
ウ 周囲の圧力に負けて、自分で何をどうすべきか考えることができなくなってしまったことを後悔したから。
エ 集団のみんなが同一であることが求められ、個人が特別なものを持つことができなくなることに反対だったから。
オ 集団内では協調性や思いやりが養われ、他人の意見を尊重することが第一とされることに異議を唱えたかったから。
オだけはほとんど他と絡みのない選択肢なので×。残りの4つの選択肢を比較すると、ウ「周囲の圧力」のようなことが書かれているのがイやエ。
したがってウ、イ、エが怪しい。この3つの中でア「独自の考えを失ってしまうこと」と絡みがあるのがウだけ。実際に正解はウでした。
×選択肢は正解選択肢から作られてることを逆手に取れば正解を導けることも!
実際に選択肢をつくるときは、この絡み合いを意識してつくっていることがわかる問題もみつけましたよ。
【芝浦工大柏高校・平成29年】「この構造」とはどういう「構造」ですか、最もふさわしいものを次の中から選び、番号で答えなさい。
まずは正解の選択肢
○スポーツ選手は、特別な社会的役割を担い、その役割を果たすことを条件に、人々の注目や応援を受けているので、その役割を果たせなかった場合は、人々の失望や怒りを引き受けなければならないという構造。
この正解の選択肢とかなり似ているのが次の×選択肢です。
×スポーツ選手は、役割を果たせなかった場合は、人々の失望や怒りを甘んじて引き受けなければならないことを前提に、特別な社会的役割を担って、人々の注目や応援を受けているという構造。
○の正解選択肢の文の順番を変えて×の選択肢が作られたことがわかるでしょう。ところが順番を変えているだけにちょっと意味のわからない選択肢になっています。このようにわけのわからない選択肢でも正解選択肢と絡みが強くなることがありますから、その絡み具合で正解の選択肢も浮かび上がってきてしまうのです。
前回の記事では×の選択肢を見分ける裏ワザを紹介しました。そのような明らかな×選択肢は消去できるんですけど、正解の選択肢との絡みはないかという視点では、まだ使える選択肢です。×が決まると、その選択肢を見ない人がいるんですけど、正解らしさも持っている選択肢になる場合もあることは頭の隅に置いて下さい。
×肢でも正解選択肢と絡み合う場合あり!
選択肢絡み合いのテクニックと併せるべきなのは、問題文に正しく答えている選択肢かどうかという点。選択肢が長くなる私立入試では、選択肢自体は正解っぽくても、問題文に応えていない場合もある。次の問題では、選択肢の絡み合いと問題文に正しく答えているものかどうかの検証を行って正解を導いているので参考にしてみて下さい。
問題文に正しく答えていない選択肢は×
【芝浦工大柏高校・平成29年】傍線部「戦争のかなしみと開放感」とはどういうことですか。最もふさわしいものを次の中から選び、番号で答えなさい。
1戦争のために、正月になっても来客が少ないのは悲しいが、その分、女が自由気ままに遊んで過ごす時間ができたのは好ましい、ということ。
2戦争のために、華やかに正月を祝うこともできないのは悲しいが、いつもの正月のような忙しさがなく女は気楽だ、ということ。
3戦争で、正月が来ても何もできない状況なのは悲しいが、その戦争も終わりそうなので、家を守る女としてはいろいろ期待がふくらむ、ということ。
4戦争がいつになったら終わるのかわからないのは悲しいが、 戦争の間は人の出入りも少ないので、家にいる女は暇をもて余 している、ということ。
5日本が戦争をしているという事実は悲しいことであるが、戦争の間は正月の行事もほとんどないので忙しくなくて落ち着いていられる。
まず、1は戦争中に「女が自由気ままに遊んで過ごす時間ができた」というのが明らかにおかしい。常識的に考えて「日本が戦争中に女が自由気ままに遊んでいた」なんてことはあり得ないだろう。
次に、3だけ「戦争も終わりそう」としていて他の選択肢と絡みがない。問題文も「戦争のかなしみと開放感」とはどういうことですか。と聞いているのに戦争も終わりそうというのはちょっとありえない。
また「正月」の話題が欠けてしまっているのが4だけなので4もなさそう。
残ったのは2と5。5は「開放感」とはどういうことかと聞かれているので「落ち着いていられる」というのは「開放感」という感じがしない。よって2が正解となる。
【芝浦工大柏高校・平成24年】傍線部「それはずしりと重かった」という表現から読み取れることとして最もふさわしいものを次の中から選び、番号で答 えなさい。
1 「私」は、嫌がる大五郎を無理やり獣医さんに渡してしまい、そのまま大五郎が死んでしまって死に目に会えなかったので、 激しい後悔と悲しみに襲われた。
2 大五郎は、昨日まで元気だったのに今朝になって急に弱り、 あっという間に死んでしまい、「私」にはその突然の死がまだとても信じられなかった。
3 「私」は、獣医さんのところで大五郎を死なせてしまったこ とが、大五郎にとって本当によかったのかどうかわからず、気が動転していた。
4 「私」は、獣医さんを怖がる大五郎を獣医さんに渡し、そこで恐ろしい思いをさせてしまったことが悔やまれてならず、深い自責と後悔の念にかられた。
5 大五郎の死はあまりに突然のことで、大五郎はやせ衰えることもなく死んでしまったと思うと、悲しみが一層深くなり、とても耐えがたい思いがした。
問題文で「ずしりと重かった」とあるので、2「とても信じられなかった」は信じていないのだから重く受け止めていないので×。また3の「気が動転していた」はも「重く受け止めていない」ので問題文に対応していない×。
1と4は「無理やり獣医さんに渡した」というところで絡みあるので正解に近そう。この2つの選択肢のどちらかが正解なので本文でチェックすれば完璧です(正解は4)。
対立する選択肢ではどちらかが正解
本文の内容合致問題で、対立する選択肢が選択肢の中にある場合、そのどちらかが正解になる可能性が高くなるというものです。
例えば、わかりやすい例で考えてみましょう。
本文の内容と一致するものを選びなさい。
1 Aが犯人である
2 Aは犯人ではない
3 Bが犯人である
4 Cが犯人である
この選択肢では1と2が対立しています。だからどちらかが正解になるというものです。これくらいわかりやすい選択肢は出てきませんが、選択肢を見比べてみると反対のことが書かれている場合もあるのでこの裏ワザが使える場合も出てきます。例えば、次の問題。
【芝浦工大柏高校・平成25年】本文の内容と一致するものはどれか。
〇他者を理解することがとても難しいのは事実であるが、看護の場で「全人的理解」ということが要請されるようになったの は、理由があってのことである。
×「他者の全人的理解」という言葉が使われるが、人間は完結した全体としてとらえられる存在ではないので、「全人的」という表現は改めなければならない。
片方の選択肢が「全人的理解」を評価した選択肢であるのに対し、片方の選択肢は「全人的理解」のダメ出しをしている。このように対立する選択肢がある場合には、片方の選択肢が正解になりやすい。したがって、本文を読んで、筆者が「全人的理解」を評価しているのかいなかをチェックすれば、すぐに正解の選択肢を選ぶことができるというわけだ。
【芝浦工大柏高校・平成24年】傍線部「その話をする」とあるが、河井は生徒に何を伝えるためにどのような話をしたのか。その説明としてふさわしいものを次から一つ選び、記号で答えなさい。
ア 生徒の見たことのないホタルの光を実感させるために、小さ なホタルが集まることで光に満ちあふれた海のようになる幻想 的な光景を実際に見たTさんの話をした。
イ 野川の自然の状態がいかにすばらしいかを伝えるために、実 際に野川にいた数かぎりないホタルの群に感動したTさんの話をした。
ウ 自分の目で見なくても心にのこる風景があるということを伝えるために、Tさんが幾千のホタルが野川にいるのを見た話をした。
エ 自分の目で見なくては自分のものにならないということを伝えるために、ホタルを見たTさんの話を聞いて、自分がホタルを放つイベントに参加した話をした。
まずア~ウは「Tさんの話をした」となっているが、エだけ「自分の話」をしているので×。
ただこのエの×選択肢、前半がウと反対のことを言っているんですね。
ウ 自分の目で見なくても心にのこる風景があるということを伝えるために
エ 自分の目で見なくては自分のものにならないということを伝えるために、
よって対立する選択肢は、片方が正解になりやすいのでウが怪しい。実際に正解はウでした。
裏ワザのネタ元はコチラ
いかがでしたか。選択肢の比較法。
確かに本文読んで問題に答えることができれば問題ないですけど、選択肢問題で取れない場合って、選択肢の比較ができていないことが多いんですね。
とくに偏差値60超えるような私立高校の入試問題では選択肢が長くなる傾向がありますから、選択肢の比較ができるかが重要になってきます。
2つぐらいまで絞れても、最後の決め手がないということもあります。そういうときに選択肢同士の比較をして絡み合いを判断材料に持ってくるのもアリだと思います。
国語的には邪道ですけど、そもそも国語の読解問題にどの程度の客観性があるのかも疑わしいのです。文章の著者でもわからないということもあるみたいですし。
ですから出題者側に回って、どうやって正解の選択肢を隠すのかを知っておくのは悪いことではないと思って私立入試直前期にまとめてみました。
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